• マンション・バリューアップ・
    アワード2022
準部門賞
  1. 管理組合運営部門
  • IT技術を使って
    高齢化対策!?
藤波 顕 様
  • 株式会社東急コミュニティー
  • 築54年、建物も住民も高齢化が進み、課題が山積している。具体的には、修繕積立金不足による修繕積立金改定、長期修繕計画の見直し、大規模修繕工事の実施、給排水管改修工事の検討などである。又、住民も高齢化が進み、かつて活発に組合活動へ参画していた組合員も、ぽつりぽつりと姿が見えなくなり、役員の輪番制も崩れ始めている。
  • 同時にここ数年、世田谷区の中でも比較的良い立地ということもあり、リノベーションされた住戸へ入居する若いファミリー世帯が増え始め、住民の中で高齢者と若い現役世代の二極化が進んでいる。
  • 管理組合財政においては、築年や漏水事故の増加に伴う共用部分の火災保険料の負担増、清掃員などの人件費の負担増、これまで組合員にて実施してきた除草作業の、外部委託による新たな費用発生負担など、日常的なランニングコスト増加が組合財政を圧迫し続けている。これまで必要な範囲で管理費などの増額改定を行ってきたが、今後も更なる支出の増加が予想されている。
  • 更に、高齢な組合員はもとより、現役世代の若手組合員は日々忙しく、役員のなり手不足も深刻である。
  • 大きくは、二つ。一つは管理組合運営を効率化し、管理組合のランニングコストを削減すること。二つは、役員のなり手不足を解消すると共に、高齢化した組合員と若手組合員で二極化したマンション内の交流や一体化を図ること。
  • IT技術を使って高齢化対策!?
  • 管理組合運営の効率化においては、理事会を基本的にオンラインでの開催のみとすることとした。
  • しかし、高齢者がオンライン理事会には馴染まないという懸念もあり、試行錯誤を繰り返した。具体的には、管理組合としての方針策定に際しては、各戸にてインターネット環境やパソコン、スマートホンなどの利用状況に関するアンケートを実施するなど、周知期間を十分に確保することや、高齢者などのインターネットへの抵抗には十分配慮し、パソコンなどを使う理事会の形に対して毛嫌いする方へ、理事などが個別訪問し丁寧な説明を心掛けた。
  • 更に、オンライン理事会を開催する前には、「お試しでやってみる」という、さながらスマホ教室のような主旨にて、管理会社の担当者が各自持ち寄ったスマートホンなどの使い方を、一人一人丁寧にレクチャーしながら、オンラインでのやり取りを体験する会を開催した。
  • 実施内容
  • 当初はスマートホンなどを持っているだけで、全く使えなかった高齢者も、ヘッドセット(イヤホンとマイク機器)を購入し、今では楽しんでオンライン理事会へ参加している姿が見られる。又、1台のパソコンを共有するために、親しい間柄の住民同士が集まり、複数名でオンラインに参加するなど、今回の試みを通してリアルな対面や交流が促進された面もあった。
  • 更に、現役世代は、出張先や仕事の合間に理事会へ参加するなど、ご自身の時間効率が高まり、家族と過ごす土日ではなく、平日の夕方~夜の時間帯での理事会開催が実現し、出席率が増えた。
  • 一連の取り組みを通して、当初はオンラインのみでの理事会開催というのは現実的ではないとの意見も組合員より挙がっていたが、安定した開催実績を続けていくことで、管理会社と協議を行い管理委託費の減額が実現できた。
  • 付け加えて、管理会社で働く担当者も、小さな子供の親であり、土日中心の業務から平日中心の業務となり、更にオンラインでの開催となることで、移動時間の削減や労務負担が減り、ワークライフバランスにも貢献している。
  • 管理会社として、高齢化やコロナ感染拡大、物価上昇など、不透明感が増す中で、その役割や働き方を常に柔軟に捉え、トライアンドエラーを繰り返しながらも、少数意見も含めた小さな一声にも耳を傾け、コミュニティが抱える課題の解決に挑戦することができた。
  • 別紙1
  • 別紙2
  • ■ 苦労した点・工夫した点
  • 高齢者にはオンライン理事会は出来ないという先入観を持たずに、丁寧に導入まで時間をかけたこと。又、高齢者こそ、親族などからの勧めでスマートホンなどのデバイスを有していることが意外と多い反面、持っているだけで上手く使えていない方が多くいらっしゃることが分かった。
  • デバイスの使い方をレクチャーするには、かなり手間がかかり管理会社の担当者の業務を超えていた部分もあったと思う。今後は、更に組合員同士で操作方法を学びあえる仕組みや仕掛けが必要である。
  • 居住者の声
  • 「これまで、持っているだけで電話機としか使用しなかったスマートホンを活用することが出来てよかった」という声があった。又、ご家族へオンライン理事会に参加したことを伝えると、「すごいね!」と驚かれ、プライベートでもご家族同士でのビデオ通話などを行うきっかけになったとのお話も頂いた。
  • 現役世代では、毎回土日の時間を理事会に取られ、貴重な家族の時間を犠牲にするか理事会を欠席していたが、オンライン理事会になることで、平日の隙間時間で理事会へ参加することが出来た、との御意見を頂いた。
  • 又、理事長からは、オンライン理事会では資料を画面で共有することがスムーズにできるため、想定していなかった資料をその場で共有することもでき、理事会も充実した。印刷物では分かりにくい部分も、ポインターで示しながら具体的に説明を得られるため、その点も分かりやすい理事会となった、との御意見を頂いた。
  • 本件を実施するのに掛かった費用(掛かる費用)
  • なし
  • 本件を実施することで削減することが出来た費用
    (出来る費用)
  • 年間約10万円、管理委託費の約3%のコスト削減が図れた。
  • 結果報告
  • イメージ写真
  • 別紙1
  • 別紙2