• マンション・バリューアップ・
    アワード2022
佳作
  1. マンション管理
    適正評価部門
  • マンション管理組合・地方自治体・
  • 管理会社の「三位一体」で臨む
  • マンション管理新時代
  • マンション管理組合・
  • 地方自治体・管理会社の
  • 「三位一体」で臨む
  • マンション管理新時代
米藤 健太 様
  • 株式会社東急コミュニティー
  • アクレスティ南千住は、2010年1月に南千住地区再開発事業により建造された「特定用途複合建物」である。JR常磐線、つくばエクスプレス線、東京メトロ日比谷線「南千住駅」西口に位置し、住宅、商業施設、公益施設(荒川区)により構成されている建物には、近隣住民及び公共交通機関を利用する乗客等、日々沢山の来訪者が訪れる、南千住地域のランドマーク的建物である。
  • また以下のことから、マンション管理組合という枠を超え、地域においては公益性の高い建物と評価されている。
  1. 地方自治体との災害時協定締結
    有事の際は建物4階にある駐車場を「帰宅困難者」「一時避難者」の為に開放し利用いただける。また建物内だけでなく周辺にて大規模火災等が発生した場合に備え、多量の消防水利を設けている。
  2. 地方自治体が企画・運営する「街なか花壇事業」に参画
    自治体と地域住民と連携し建物周辺に設置した花壇への花植え活動と日常管理を行っている。お花そのものの魅力が憩いの場として雰囲気を良くさせただけでなく、その副産物として、駅前立地特有の課題とされる「違法駐輪」「ゴミの投げ捨て(放置)」等が劇的に解消され、美化活動にも繋がった。
  3. 町内会(自治会)及び商店会との連携
    管理組合として町内会(自治会)及び商店会に加入をしており、それぞれと連携して「防災」「防犯」等に係る活動を行っている。
  • アクレスティ南千住管理組合はその資産価値及び居住価値の向上だけでなく、建物がその地域にあることによる「地域価値」の向上を目的とした活動にも、積極的に取り組んでいる。しかし一方で、マンション築年数経過とともに、管理組合の組合運営に改善を必要とする事項等が散見され、それらの課題解決も必要であった。
  • 管理状況に不十分な箇所が散見された理由として、管理組合の「組合運営方針」が定まっていなかったということが挙げられた。価値等向上の為の「評価基準」が不明確で、拠り所とするものがなかったことで、改善実行の判断が出来ないというのが実情であった。また管理会社としても、価値等向上に資する改善提案のための明確な根拠を持ち合わせていなかった。
  • 「マンション管理適正評価制度」はそれらの実情を補完し、様々な管理組合・管理会社が抱える課題を解決するための有益な制度であり、「申請及び高評価獲得に向けた取り組みが、管理状況を良好なものとし、ひいてはマンションの価値を高める」と考え、この制度の申請を行うこととした。なお管理組合、地方自治体、管理会社それぞれに取り組む課題があり、課題解決及び「資産価値・居住価値・地域価値の向上」という目的を達成させるために、互いに補完し合う必要があったことから「マンション管理組合・地方自治体・管理会社の『三位一体』で臨むマンション管理新時代」をテーマに、取り組みを行うこととした。
マンション管理適正評価制度申請に向けた改善提案
  • 管理組合は「マンション管理適正評価制度」で高評価を獲得することを「組合運営方針」と位置づけた。また管理会社としても、制度上の各種評価項目を根拠に、改善提案を行うこととした。これにより、管理組合と管理会社のベクトルが一致し、改善に向けた取り組みを共に行うことが可能となった。
  • 次に、マンション管理組合と管理会社にて「マンション管理適正評価制度」の概要及び各評価項目への理解を深めるため、勉強会を実施した。その後、現在の管理状況の評価がどうなるのか、仮評価(テスト)した。その結果を基に、「評点が獲得できた項目はどういう理由で評価されたのか」の確認を行った。一方で「評価が得られなかった項目は、なぜだめなのか。なぜ改善が必要なのか。どうしたら評価が得られるのか。」を丁寧に説明し、確認を行った。
  • ここまでの作業により、管理組合の抱える課題の「見える化」が果たされ、その後の改善提案が容易となり、そして管理組合も「評価制度で高評価を獲得することを組合運営方針」に則り改善を実行することが可能となった。
管理計画認定制度開始に向けた地方自治体との連携
  • アクレスティ南千住が所在する「東京都荒川区」は2022年10月末現在、管理計画認定制度が開始されていない。
  • 荒川区としては、制度の早期確立に向けて、制度の概要を制定すべく現在区内のマンションの管理状況実態調査、管理の適切な維持・管理方法の情報収集に取り組んでいるが、制度確立に資するための有益な情報が得られていないようであった。 管理組合としては、管理計画認定制度により得られる「資産価値・居住価値・地域価値の向上」やインセンティブ等(各種融資の金利引き下げ等)は大きなものと考えていたことから、制度の早期確立を望んでいる。
  • そのような状況の中、管理組合と管理会社による「マンション管理適正評価制度の申請」への取り組み事例並びにマンション管理の改善状況を荒川区に共有することが「管理計画認定制度」確立に寄与すると考え、3者にて打ち合わせを行い、認定制度確立を前進させる取り組みを共に行った。具体的には、荒川区内のマンションを対象とした「アンケート調査」の実施並びに協力を行い、また当マンションの活動事例を区内のマンションに共有することで、地域全体としてマンションの価値向上に関心を持っていただく等の試みを行った。これにより、荒川区はアンケートの回答による管理状況の把握、各マンションの取り組み事例等の情報収集に繋がったとのことであった。
以下のような実施結果に繋がった。
  1. 管理組合方針の明確化
    「適正評価制度で高評価を獲得する」ことを管理組合方針としたことで、 これまでの管理組合の対応方針の見直しが図られ、各種修繕・改修工事の実施も適切に行われ、(防犯カメラ設備の機能性向上を伴うリニューアル、館内電灯のLED化、等)建物のハード面の管理状況が良好となった。またソフト面においても、防災マニュアルの、入居者名簿等の整備を図ることにより、防災・防犯体制が構築でき、安全安心な住環境の整備に繋がった。
  2. リセールバリューの向上
    売却者及び不動産会社へのヒアリングの結果、この1年間で取引された居室の売却価格が新築時購入時の1~2割増し(新築時+○百万円~〇千万円)となる取引事例もあったとのこと。制度申請後の「評価サイトへの掲出」の影響もあると考えられるが、それ以上に申請までの過程で取り組んだ各種改善によるものが大きく、建物の管理状況が良好なものとなったことで建物の資産価値向上に繋がったと考えられる。
  3. 地方自治体による管理計画認定制度の確立
    管理組合の取り組みが地方自治体の「管理計画認定制度」確立の一助となり、制度開始を大きく前進させたと考える。当管理組合の取り組み事例が地域のマンションに広まったことで、地方自治体が行う「管理状況実態調査」のアンケート回収率が高まり、制度確立の検討を加速させたとのこと。
  • ■ 苦労した点・工夫した点
  • マンション管理適正評価制度は開始初年度ということもあり、その影響度が不明確であったことから、申請を躊躇する否定的な意見の方が多かったと感じています。申請し低評価を取り、それが公表されることで、逆に資産価値等の低下を招くのでは、との意見もありました。それでも私は、たとえ結果的に低評価となろうとも、勇気をもって申請することが必ずマンションの未来を作っていくということを、強く申し上げました。この制度は「申請して出た評価が全て」ではなく、課題の「見える化」を図り、改善の過程でマンションの価値を高めていくことに意義があると考えています。私は制度の機能的な価値、制度がもたらす効用的な価値ではなく、この制度がもたらす「未来価値」を語り、「未来」へのビジョンを提示しました。この建物を地域に愛されるマンションにしたい。子供たちやお年寄りの皆様が、安心安全に暮らせる建物にしたい。マンションに居住する方、関係者が「このマンションと地域で暮らしてよかった」と思える未来を、共に創造していきたい。この想いが伝わり、「マンション管理組合と地方自治体、管理会社の三位一体によるマンション管理新時代」への取り組みが始まったのです。
  • 居住者の声
  1. 管理組合の抱える課題の「見える化」が図られ、理事だけでなくその他組合員と管理会社との、課題解決に向けた改善提案と改善努力のベクトルが一致したように思う。みんなが一致団結して「自分たちの建物を良くしよう」「地域に誇れる建物にしよう」「地域価値向上につなげよう」という思いで活動に取り組む契機となった、良い制度であったと思う。
  2. 最初は評価制度への申請は「様子見でいいのでは」「最高評価が獲得できる管理状況になってから申請した方がいいのでは」と考え、取り組みには否定的であった。しかし、取り組んでみて、申請することに意義があると感じた。申請することで「課題」が明確となり、そこに向けた具体的なアクションにもつながる。高評価が取れるまでと考えていたら、惰性に流されいつまでたっても申請しないままで終わっていたかもしれない。たとえ高評価が取れなくても、申請に向けた取り組みそのものが、結局はマンションの価値向上につながるということが分かった。
  3. 建物が綺麗に整備・修繕されるようになった影響で、建物への来訪者が増えたように思う。綺麗な建物には人が集まるのだろう。これからも地域に誇れる建物であり続けたい。
  • 本件を実施することで削減することが出来た費用(出来る費用)
  • 【削減できた費用】
  • 直近1年間の工事費推定額として約1,000万円。これは適正評価制度申請検討以前は各種修繕を「故障した都度修繕」としていたものを、申請検討以後は方針を見直し「予防保全(計画修繕)」に変更したことから、工事一括発注のスケールメリットを活かし上記金額の削減につながった。
  • 実施結果
  • 結果報告
  • イメージ写真
  • 別紙1
  • 別紙2