• マンション・バリューアップ・
    アワード2021
佳作
  1. 管理組合運営部門
  • 分譲マンションで
  • コロナウイルス感染をふせげるのか
  • 迅速な対応と
  • 個人情報を守る苦悩と狭間
日置 一夫 様
高取台サンハイツ管理組合法人
  • 今、マンションでは管理員が休む週休日や祝日に、「コロナ危機対応室」役員や住民ボランティアが、早朝から共用部分の手擦りやトイレ、集合郵便受け、多目的室机や椅子、エレベーター等の消毒に汗を流します。また、訪問者には、管理員や住民から「エレベーターの一人乗り」や「マスク着用」及び「手指の消毒実施」を呼び掛けています。
  • 2019年12月に中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染症は当初、SARSと同様で私達はさほどの影響はないと判断。しかし、その後の武漢市の全面封鎖、2020年2月に横浜港に接岸されたクルーズ船での集団感染の報道を受け、新型肺炎=新型コロナウイルス感染症はただ事ではないと危機感が管理組合・住民を襲いました。
  • 危機感を強めた管理組合は、広報紙「ひろば」を通じてコロナウイルスの深刻さを訴え、感染予防の注意喚起を掲載、マンション(築47年90戸170人高齢化率50%超え)での実質的な新型コロナウイルス感染症との長い闘いとなりました。
  • 高齢化が進捗するマンション(集合住宅)内で、新型コロナウイルス感染が発生し、住民の生命を脅かす爆発的感染を引き起こさない為の行動を起こす。その手段として「コロナ危機対応室」を立ち上げ、コロナウイルス感染防止の全権限を委譲する。
  • 「コロナ危機対応室」の立ち上げを提案
  • 住民全員の命を守る未知の戦いに挑む
  • ー朝令暮改の活動も厭わずー
  • 「コロナ危機対応室」の立ち上げを提案
  • 2020年4月7日政府から兵庫県を含めた緊急事態宣言の発出がされ、理事長は直ちに緊急理事会(構成員14名)を招集し対応の協議をスタート。討議内容の概要は
  1. 感染状況の現状把握と今後の予測
  2. 集合住宅で感染者をだせばクラスターを引き起こす懸念
  3. マンションにおける感染者の取扱い、「公表」の有無、個人情報保護法との関連
  4. 感染予防は住民と一体化の取り組み、その具体策は、「サンハイツ住民の多数が命の危険に晒されている、危機が迫っている」として理事会に「コロナ感染危機対応室」を組織し権限を集中・対応の迅速性を重視する。本日構成員を確認する
  5. 4月14日までに具体策を策定し、広報紙「ひろば」で提案(臨時総会開催は「三密回避」のため不可)
  6. 4月19日に住民による「信任投票」を実施する
  • 住民全員の命を守る未知の戦いに挑む ―朝令暮改の活動も厭わずー
  1. 「コロナ危機対応室」設置の目的
    居住者への感染拡散防止とマンション内における感染者発生の対処を起案・実践することを目的とする。また、管理会社の協力を得るため、管理員及び清掃員と管理会社神戸支店の全面的な応援を求める。
  2. 「コロナ危機対応室」の組織・会議・任務・権限
    コロナ危機対応室の組織を理事会内におき、室員は理事長が指名する6名の少数とする。任務と権限は前項目的を達成するために高取台サンハイツ管理組合法人におけるヒト・モノ・カネ・情報の全ての権限を与える。
  • 権限(感染発生時住民の義務対応/動員要請含む/予算措置等)は、高取台サンハイツに関わる新型コロナウイルス感染に関する一切の権限を「コロナ危機対応室」に委譲することとする。但し、国家及び自治体の発出する指示・命令はこれを優先する。
  1. 権限の主な内容
    a.新型コロナウイルス感染拡大防止に関わる全ての活動と予算執行に関する権限。
    b.除菌等の作業動員を要請する権限。
    c.住民の新型コロナウイルス感染に関わる情報の掌握。
  2. 住民の通報義務と連絡先
    感染又は濃厚接触者の住民は、「コロナ危機対応室」に通報する義務を負う。
    ■通報先 管理事務所
    受付は24時間対応、受報後、直ちに室長へ連絡、室長は即刻室員を招集。(招集は開催時間を問わず)又、緊急の場合は相談役へ通報する。対応は24時間とする。
    ■「コロナ危機対応室」に通報する内容
    感染住民及び家族の義務=感染爆発防止として
    ①陽性又は濃厚接触者と判定された日時(この時点では②③⑨は不要)
    ②判定医療機関名
    ③隔離病院名又は隔離宿泊先
    ④氏名(マンション内外に公表しない)
    ⑤性別
    ⑥年代
    ⑦感染場所
    ⑧サンハイツ居住階
    ⑨陰性判定後の帰宅日時
  3. 感染・陽性・濃厚接触者の事実発表
    サンハイツ内の爆発的感染防止の目的として次の項目をサンハイツ内に公表する。発表の内容は、感染者及び陽性者 並びに濃厚接触者氏名は公表せず、発生者の居住階を発表し、直ちに、全館(共用部)の除菌作業を実施。各居宅の除菌は各居宅に一任する。
    ①感染等情報判明次第、直ちに、全館を危機対応室・管理会社・ボランティアにおいて除菌作業を実施する。
    ②各居宅に情報伝達し、注意喚起を行う。と同時に各戸での除菌作業を促す。
    ③特に、感染者等発生該当階においては前記関係者による除菌作業を徹底する。
    ④感染者等該当居室の除菌を徹底する。(保健所作業による)
  4. 共用部の役員・ボランティアによる消毒作業の提案
    マンション共用部の除菌としてエレベーター内部及び各階エレベーターボタン、各共用階段手摺、共用トイレ、集合郵便受け、多目的室、エントランス机椅子等の除菌について、管理人・清掃要員、「コロナ危機対応室」及びボランティアにおいて実施する。また、換気対策として各階エントランス風除ドアを常時開放する。
    ■エレベーター一人乗りの提案
    エレベーターの箱の面積が狭く、多数が乗り合わせると感染リスクが高く、4月19日(日)午前7時から「一人乗り」運転を 原則とする。エレベーターは2台運転されており、次のエレベーターが来るまで待って一人乗りを実践して下さい。宅配業者 や外部からの訪問者があった場合は、感染予防のため、次に待つよう説明して理解を得て下さい。但し、介護施設等の 送迎、車椅子使用の介助者、子供連れ、緊急時はこの限りではありません。
    ※元気な人は階段での移動を進めます。(運動不足の解消にもなる)
    ■来訪者には、手指消毒・マスク着用を義務付ける。
 
  • 広報紙ひろば
  • 「コロナ危機対応室」設置
    信任投票は90%(反対ゼロ)で可決 
    ― 住民の信頼感に感謝、危機対応室の責務の重大さに痺れる思い ―
  • マンション創建以来の「史上空前絶後の事案」と位置づけ、感染症対応に関わる「コロナ危機対応室」の立ち上げを皆さんに提起し4月19日(日)信任投票の結果、「信任する」90%の多数が賛成、「反対」はゼロでありました。理事会が感染症対策に係わるヒト・モノ・カネ・情報に関する全権限が理事会「コロナ危機対応室」へ委譲するという提案が承認されました。
  • 今後、住民の皆さんの命と健康を守る全責任を「コロナ危機対応室」が担うこととなりました。
  • コロナ危機対応室と住民との約束を確認
    ― ひとりの感染が感染爆発を起こすことを自戒し感染予防に最大の努力を ―
  • 新型コロナウイルス感染対策について、全権限を「コロナ危機対応室」に委譲することを圧倒的多数で信任決議されたのを受け、「コロナ危機対応室」と住民との約束を以下の通り確認しました。
  • 【コロナ危機対応室と住民との約束の内容】
  1. 現状が命に係わる「非常事態」であるという認識を持つこと。
  2. サンハイツ住民が困難に直面しても一致団結して冷静に取り組みを行うこと。
  3. 住民が感染・陽性の場合は、直ちに本人又は家族から「コロナ危機対応室」へ連絡すること。
  4. 住民が濃厚接触者で自宅待機を指示された場合も、直ちに「コロナ危機対応室」へ連絡すること。
  5. 感染者や陽性と診断された人はサンハイツ内で氏名を公表はしないが、それとなく知ってしまった場合は、該当者の個人攻撃等は絶対にしないこと。
  6. 感染爆発が想定される場合で、住民の協力が絶対必要とされる時は、住民上げて「コロナ危機対応室」に協力をすること。
  • 【前記約束の5で葛藤した一番の問題点は個人情報の取扱い】
  • 管理組合理事会での重要な問題は、感染者又は陽性者及び濃厚接触者の氏名公表の取り扱いでありました。個人情報保護法の観点から、本人又は家族から同意が得られない場合は、一切、公表しないということ。また、それとなく判明しても決して「差別」「村八分」にしないということでした。この対策に広報活動を割くこととしました。
  • コロナ危機対応室」設置後の活動
  1. 神戸市における毎日の感染情報の掲示及びコロナウイルス感染に関わる速報等の広報活動を活発化。
    ①日々の自治体及び政府の動き、感染者数の情報を掲示。
    ②長期に亘る感染予防の心構えと実践を住民に訴える広報紙「ひろば」の作成と配布を間断なく進める。
    ※パンフ「新型コロナウイルスとは」配布
    ※「コロナ感染・濃厚接触者となった、さぁどうしよう」 パンフレット配布
    ※ポスター、チラシによる啓発 非常事態慣れに注意喚起
  2. 館内共用部分(エレベーター内部と各階ボタン・各階段手摺・共同トイレ・多目的室内等)の消毒作業は、管理会社管理員・清掃要員、危機管理室員、ボランティアによる作業。
  3. 各戸住民に消毒剤を無償( 次亜塩素酸ナトリウム溶液)及び手指消毒剤/エチールアルコールや台所洗剤等を無償配布。
  4. 体温測定器・血中酸素濃度測定器・アクリルパーテーション(仕切り板)の購入。
    ※諸会議並びにラジオ体操、館内ウォーキングの際には、測定を実施している。
  5. 外出自粛による住民の健康不安及びストレス解消並びに団結力保持のために、体操・ウォーキング・健康問題勉強会(専門家招請)及び老人会が運営する農園での作業を実施。収穫と野菜販売会等を進めている。この試みは、住民の精神安定と仲間意識を大きく醸成している。
  • 信頼関係の証は過去の歴史に基づく
    ― 阪神淡路大震災で受けた大きな教訓 ―
  • 高取台サンハイツ(神戸市長田区)は、先の阪神淡路大震災後に神戸新聞社の取材を受け、震災を住民の団結で乗り切ったこのマンションは「コンクリート長屋」であり、住民の助け合いは強固であったと記事にされたことがあります。 震災時における理事会役員や住民の凄まじい活動努力・苦闘の歴史がありました。
  • 1995年1月17日早朝にマグニチュード7.3という大地震が発生。サンハイツ90戸(170名8階建て)は大混乱となりました。管理組合役員は素早く行動を起こし、負傷者等の安否と建物の安全確認に動き、冷静及び沈着に行動することを呼びかけました。電気・ガス・水道・エレベーターの停止等、ライフラインが全てストップ。マンション南部では黒煙があがり、炎上する様も見て取られました。
  • 当時、理事長はじめ主要な役員は公務員が多く、各職場の持ち場に向かい不在、残る役員が連日会合を重ね、飲み水の確保、イトレの水確保、食料の確保、余震対応・避難についてなどの対応を討議したことが記憶に残ります。
  • 飲み水の確保では、役員が自衛隊の給水場所情報を入手し、給水に駆け付け、住民に配布したこと、そして、トイレの水は、近くの中学校プールの水を汲み、人力で8階から全戸のバスタブに補水しトイレ用水を確保したこと、食料なども避難先を訪問し手に入れたこと等々、「人間一人では生きられない、助け合いの大切さを学んだ」ことが昨日のように鮮明に思い出されます。
  • また、マンション内共用廊下(約1800㎡)の亀裂を多くの住民で自力塗装、南公園と建物が1m近く離合、ボランティアで離合箇所に型枠を組んで、ミキサー車を手配し補修、汚水桝の破損の補修のために汚水桝に入り込み、汚物にまみれながらセメントを手で破損個所を補修等。多くの困難を役員やボランティア等多くの住民の参加で成し遂げたことから、住民に団結心が出来ました。
  • その後、夏祭りや文化祭、ふれあい喫茶に夜を楽しむ会、小旅行や花見や紅葉見学など住民の繋がりが強固になったといえます。さらに、独居高齢者の孤独死、老々介護の共倒れ防止の高齢者見守り活動をスタートさせ、遠く離れた家族との連携で、多くの高齢者の支援が実行されています。また、「認知症予防と共生」、認知症発症を公表(家族崩壊を回避、住民との支え合い)しようを合言葉に、様々な研修会や予防対策を住民と共に進めています。一昨年発足した老人会が里山で150坪の農地を借り入れ、健康増進や認知症予防としての農作業を進め、収穫した旬の野菜などの販売会、料理会を行いより一層、住民のコミュニティ活動が充実強化されています。
  • このような、活動の実績が、今回の新型コロナウイルス感染に対する危機対応は、理事会と住民の信頼関係の裏付けによって以後の迅速な対策が取り得た証左といえます。
  • 現在も続く様々な困難な事象
  • 新型コロナウイルス感染に関わる困難な事象について列挙してみたいと思います。
  1. 外出自粛、三密回避等々、長引く緊急事態宣言下で、住民の疲労、ストレスが蓄積していること。「鬱」を訴える、入院する等の高齢者住民が増加しつつあること。
  2. これまで、管理費・修繕積立金の納付滞納がゼロであったのが、チラホラと見受けられるようになった。コロナ禍が家計を直撃していること。
  3. 高齢者の健康・栄養面での心配がある。マンション高齢化率50%を超え、コロナ禍によって孤独化を強いられている現状は、認知症のより者拡大を招き、今後に大きな問題、課題となっている。
  • おわりに
  • 新型コロナウイルス感染に関わる当初取り組みは、緊張と恐怖の中で無我夢中の活動展開でありました。ここまで、一人の感染者や陽性者・濃厚接触者を出さずにきたことは、管理組合、住民、管理会社が一体になって取り組んだ成果といえます。特に、管理員(L/M)の奮闘は特筆すべきであります。9月30日までの緊急事態宣言が解除され、住民のコロナに関する反応は、”慣れ”というか、身の回りにコロナ感染者が発生していないこともあり、少しは大丈夫かなぁ!と”油断”が出ています。各地で感染拡大が続いており、私共は、これから秋・冬を迎え、正に正念場を迎えます。
  • 「ひとりも感染者を出さない、パンデミックをマンションで起こさせない」ことをさらに合言葉として、身を引き締めて住民と共に取り組んでいきたいと考えています。
  • 現在、ワクチン接種の勧めを行い、更なる感染に対峙するべく注意喚を行い、大切な住民の命と健康を守る活動を推進していく覚悟であります。
  • 私達は過去の歴史にあるように、「負の災いの教訓を生かし、逞しく今後に生かしていく」と、新型コロナウイルス感染への取り組みで、多くの教訓・学びをしつつあります。人間困難に直面して、新たな人生の在り方の模索や希望、生き様を見出させる機会になっていると前向きに考えたいと思っています。
  • 「集合住宅・マンションだから何も出来ない」ではなく、理事会のリーダーシップ、住民の協力体制、管理会社の頑張り等、多くの人々、仲間が集うマンションだからこそ「成し遂げられる」ことに挑戦していただきたいと希求します。
  • ■ 苦労した点・工夫した点
  1. 住民の新型コロナウイルス感染症への認識を徹底させること
  2. 感染者等への差別・村八分を引き起こさないこと
  3. 共用部の消毒ボランティアの確保(週休・祝日実施)
  4. 緊急事態宣言解除後の気のゆるみ 
  5. 感染者及び濃厚接触者発生時での自宅での対応(対処方法をパンフで実施) 
  6. 全国・県・市・地域での発生情報の伝達で注意喚起(速報ビラ掲示) 等々。
  • 心掛けたことは、マンション広報紙「ひろば」や「危機対応室」からのお知らせのビラ、ポスター等で「今、何が問題で、自分たちが何をなすべきか、対応室が行っていることを知らせる」ことの頻度を増やし、住民の不安払しょくを心がけた。また、自宅閉じこもりによる「鬱対策」に注力、ラジオ体操・館内ウォーキング・健康問題勉強会(月1回)、老人会農園栽培の野菜販売会の実施/「井戸端会議」により、「私はひとりではない」と肌で感じあえることに様々な工夫を試みている。
  • 居住者の声
  • 「コロナ危機対応室」設置に係わる住民の声
  1. 理事会役員の皆様ご苦労様です。想像を絶する環境になって来ました。住民と共に報道をしっかりとらえてがんばりましょう。お願いします。
  2. 現在の窮状に関してご苦労様です。よろしくお願いします。
  3. マスク・消毒液が入りにくいので困っています。
  4. 集合住宅の性質上やはり必要と思いますが、新型コロナウイルスが悪いのであって、感染した人が悪いのではないという事をPRしてほしいと思います。個人攻撃はしないことをお願いします。
  5. 「危機対応室」設置は大変有難いことです。指示には100%従うつもりです。不要不急の外出は自粛します。人との接触は90%減らすことを目標とします。
  6. 危機対応室の室員の皆様には大変ご苦労をおかけします。ありがとうございます。
  7. 1階・2階・公園の階段前にも、消毒薬を設置してくださり、色々な情報をすぐに知らせていただいて、マンションの住民のために、色々とお世話になりまして感謝いたしております。有難うございます。
  8. 対策室にお任せ致します。
  • 本件を実施するのに掛かった費用(掛かる費用)
  • コロナ感染対策費として、予備費50万円を計上、検温器、血中酸素濃度測定機器、各種消毒剤、パーテーション等の購入及び住民への協力感謝の粗品贈呈を実施。約30万円程度の支出となっている。
  • 本件を実施することで削減することが出来た費用
    (出来る費用)
  • 広報紙ひろば