• マンション・バリューアップ・
    アワード2021
審査員特別賞
  1. 工事・メンテナンス部門
  • マンション共用施設を
  • 「New Normal」へ
檜木 新平 様
株式会社長谷工コミュニティ 本社マンション管理2部 フロント課 主事
  • 「所信表明をします。」
  • 次期役員の役職決定会において、理事長に立候補したAさんが7つの公約を出しました。その中の一つが「第2パーティールームの改装」です。
  • 第2パーティールームは、竣工当初は「託児室」として利用されており、託児室運営会社が入っておりました。しかしながら、数年後には運営会社が撤退し、その後はテーブルと椅子を若干残しただけの「第2パーティールーム」という共用施設の一つとして利用していました。しかしながら、間取りは託児室のままで、とてもパーティーができるような空間ではなく、利用件数も月間1~2件で遊休施設と化していました。
  • それに目をつけていたAさんは、第2パーティールームを改装して、素敵な空間にしようという決意をもって理事長に立候補したのです。
  • 築17年を迎え、子育てがひと段落し、働きざかりの世代が多く住むマンションに生まれ変わったこと、加えて新型コロナウイルスの流行を受けて、新たな住民ニーズに応えらえる空間を創ることとなりました。
  • 利便性を向上させ、住民が「使いたい」と思える施設にすること。
  • 第2パーティールームは託児室だった頃のままの間取りのため、室内の行き来もしづらく、小さな部屋が2つある程度。一つの部屋でパーティーをするにしても4~6名がやっと。大変使い勝手の悪い空間となっていました。
  • また、第2パーティールームの一部は自治会が倉庫として利用しているため、室内の雰囲気も暗く、とてもパーティーをするような空間ではなくなっていました。
  • 改装工事を実施することによって、利便性の向上を図ることはもちろん、資産価値の向上にもなると考えていました。
  • 時代と住民のニーズを体現する共用施設へ
  • まず、理事会内でワーキンググループ(WG)を設置し、現状を把握。その上でリノベーションを得意とする業者や他の大型マンションでの実績がある業者へのヒアリングを実施。その後、WGにおいて改修後のイメージを浮かべつつ2社へ見積依頼。見積依頼と同時に、区の助成金の有無を確認。電話だけでなく区役所にも出向き、写真やイメージ図を交えて何度も確認を行いました。その後、WGから「セカンドリビング+ワークスペース」にする案と「ワークルーム」にする案が提案され、住民アンケートを実施。結果は拮抗しましたが、新型コロナウイルスの感染拡大による在宅勤務のニーズの高まりを受け、多数決により「ワークルーム」として改装することが決定。総会へ議案上程するものの、特別決議事項としたため、住民への周知活動が必要となり、総会前に広報誌を発行することに。広報誌では、これまでの利用件数や使用料収入の低さをデータで証明し、何らかの手立てを打つ必要があることをアピールしました。また、『受益者負担』とされがちな共用施設ですが、区の助成金(※「自治会館」として改修した場合に適用)を活用することができることもアピール。結果として、総会では無事に承認されました。総会承認後、前期理事長の意思とWGを引き継いだ新たなWGが主導となり、付加設備導入(wi-fi完備、パーティション設置、豆挽コーヒー自動販売機)を進め、総会承認から10か月後にプレオープンを迎えました。プレオープン中は、「ワークルーム使用規則」制定に向けて、実際に利用した住民からアンケートを取得して、どのようなニーズがあるのかを分析しました。そして、改装工事決定から1年後、アンケートを踏まえて作成した使用規則も無事に総会で承認され、無事にリニューアルオープンを迎えることができました。 オープン後は、新型コロナウイルスの感染拡大による「New Normal」な日常に寄り添う、素敵な空間として住民に愛される共用施設の一つに生まれ変わりました。
  • ワークルーム写真
  • 月間平均利用件数が、改装前が4~5件であったのに対し、改装後は30件を上回る数値となっています。
  • 月間平均利用料金が、改装前は約2,000円であったのに対し、改装後は約10,000円となっている。
  • 利用者は主に学生と会社員となっており、リモートワークや勉強・読書で幅広く利用されております。
  • 工事費用9,297,478円に対し、助成金3,975,000円、実質負担額5,322,478円。
  • マンションの新たな資産価値として、売買の際に購入希望者様へご紹介しています。
  • 設置されたWi-fiを活用して、ワークルーム内でリモート理事会を開催することができました。
  • 苦労した点・工夫した点
  • 一番苦労した点は、住民の理解を得ることでした。共用施設なので、使わない人は使わないですし、それに対して修繕積立金を取り崩すことを後ろ向きに捉える住民も一定数いました。「どのような空間にしたいか」というアンケートに対しても、個人的な要望を自由にお答えする住民もいました(温泉にしてほしい、スポーツジムにしてほしい等々…)。住民の方々が一番納得する方法としては、やはり費用に関する点だと考え、近隣マンション連絡会という周辺の大型マンション6棟の理事長・副理事長が集まる会合を活用して、情報収集を行いました。そこで、「自治会館」として改装すれば区の助成金を活用することができるという情報を得ました。幸い、当マンションには自治会が発足していたため、理事会と自治会が連携しながら何度も区役所へ足を運び、助成金が認められるであろうお墨付きをいただきました。その上で住民向けの広報誌を作成し、これまでの実態と工事費用に関する説明を丁寧に行いました。総会議案書配布後も、理事や管理員と協力しながら出席票や委任状・議決権行使書の取得に汗をかき、結果として特別決議要件となる3/4以上の賛成を得ることができました。この経験を経て、情報を集めること、住民の立場に立って物事を進めていくことの大切さを改めて感じました。
  • 居住者の声
  • 利用者より:自宅にいると家事や子供の世話等をしなければならず、とても集中できる環境ではなかったため、仕事に集中できる環境を整えていただきありがたい。
  • 利用者より:夫婦ともに在宅勤務の日は場所の取り合いになってしまっていた。テレワーク用スペースができたことでお互いに仕事が捗っている。
  • 管理組合より:懸念だった第2パーティールームの利用率の低さを、時代のニーズに合わせて改修したことで利用率の改善につながった。アンケートの素案作成や助成金の申請補助、広報誌のベース案作成、使用規則案の作成等、諸々お手伝い頂き心より感謝したい。
  • 本件を実施するのに掛かった費用(掛かる費用)
  • 工事費用9,297,478円
  • 本件を実施することで削減することが出来た費用
    (出来る費用)
  • 助成金として3,975,000円が入り、工事費用の約45%を補填した。
  • 利用者が増加したことにより、利用料収入が約5倍となった。
  • 総会開催についてのお願い 注意事項