マンション・バリューアップ・
アワード2021
部門賞
管理組合運営部門
建物の老朽化と居住者の
高齢化に対処した
管理組合の活性化対策
構築および活動
島﨑 齊 様
シャルム浦安管理組合支援委員会
目次
背景
目的
実施内容〈バリューアップ〉
実施結果
苦労した点・工夫した点
居住者の声
背景
目的
実施内容〈バリューアップ〉
実施結果
苦労した点・工夫した点
居住者の声
本件を実施するのに掛かった費用(掛かる費用)
本件を実施するのに掛かった費用
(掛かる費用)
本件を実施することで削減することが出来た費用(出来る費用)
本件を実施することで削減することが
出来た費用(出来る費用)
1980年8月に竣工の、当マンションは築40余年が過ぎました。マンションの耐用年数は 50 年と言われていますが、当マンションは今までの管理組合理事会のご尽力により、築年数に比し、良好な状態にあります。また、新基準に基づいた耐震診断の結果も問題ないことが証明されました。しかしながら、建物の老朽化が進んでいることも事実で、この結果、営繕作業が増加しています。一方、建物を管理・維持する管理組合に目を向ければ、組合員の高齢化も進み、このため管理・維持に翳りが見られてきました。より長寿なマンションを目指し、且つマンションの資産価値を維持・向上するため、このような状況を喫緊に改善すべき方法も含めた今後の運営方針を明確にすることが必要不可欠となりました。
建物の老朽化と居住者の高齢化という双子の課題を克服し、持続性のある快適なマンション生活の構築および資産価値の維持・向上を目指した施策の構築および実施。
上記目標を達成するため、居住者の意向に基づく対応策の可視化と実施。
居住者の意向を的確に捉えるため、参加型のワークショップの開催とその結果に基づく対応策を講じるため、以下のような作業を実施しました。
(a)参加方ワークショップの開催
PCM手法(プロジェクト・サイクル・マネージメント)の一部を用いて、「管理組合の活性化」を達成するため、問題分析と目的分析を通じて必要な活動を抽出し、可視化しました。
(b)ビジョン 2050の作成と実施
参加型ワークショップで得られた活動と居住者の意向をもとに、当マンションの今後の運営指針となる「ビジョン 2050」を作成し、実施に入りました。先に述べたように、当マンションは構造上および外観上良好な状況にあります。「ビジョン 2050」は、このような状況に鑑み、通常50年と言われている耐用年数を、管理組合と管理会社との協働作業で70年まで伸ばそうという強い意向をもとに具体的な運営指針として作成され、実施に入りました。
安否確認ステッカーの
配布について
■ 苦労した点・工夫した点
目指す「管理組合の活性化」は、居住者の方々の協力がなくては出来ません。では、その協力を得るためには、どのようなことに着眼する必要があるのかを考えました。その結果、居住者の方々の共通のインセンティブ(意向)は何かを把握し、それの実現に向けて対応することが鍵であるという結論に達しました。そのため、居住者の参加によるワークショップ、すなわち PCM (プロジェクト・サイクル・マネージメント)という手法の一部を用いた参加型ワークショップを開催し、「管理組合の活性化」に向けた参加者の意向を、問題分析と目的分析を通じて複数の活動という形で可視化しました。これらの活動を念頭に置き、2050年までの活動のシナリオをビジョンとして描き、実施に入りました。
このビジョンは、「管理組合が活性化」し、積極的な活動を展開すれば、それに呼応した管理会社からの密なる支援へと連携し、この連携の結果として、住環境の改善が促進され、そしてそれを実感した居住者から積極的な協力が生じ、それが「管理組合の活性化」の更なる強化に結び付くという正の連鎖(下図参照)を軸としています。
また、身近なことで、特に工夫したことと言えば、下記 2 点があります。
(a) 管理組合活動への理解・認識の深化のため、より具体的で議事録の作成
居住者の方々の管理組合活動の理解・認識を深めてもらうため、理事会の議事録をより具体的に作成することにしました。該当月に実施した活動から見出された討議事項と討議結果の説明に加え、マンション施設の維持管理の礎である資金額(管理費・修繕費)の明示により運営実状の適時理解を得るよう努めました。また、議事録に関心を持って頂くため、前頁に示したようにマンション敷地内の草花の写真を載せたり、その写真に関連する、心に残る日本の詩歌を掲載しました。
(b) 川柳による、適切なゴミ出しの促進
課題であった不適切なゴミ出しの改善を促進するため、通常の掲示に加え、
「笑い」と「風刺」による戯画化(川柳)を用い、よりインパクトのある呼びかけを行いました。
居住者の声
本件の活動は、未だ進行中です。しかしながら、進行中においても居住者から下記ような声が聞こえています。
役員会/理事会の対応がより迅速になった(迅速な検討・対応の必要性)。
居住者の声を管理組合の運営に反映する機会が強化された(居住者のための理事会)。
役員会/理事会が毎月発行する議事録から、実施された活動が明確になった(活動内容の開示)。
管理組合活動に参加出来る機会を作ってくれた(理事会と居住者間の垣根の除去)。
ゴミの出し方や駐輪の仕方が、改善されてきた(成果の「見える化」の推進)。
本件を実施するのに掛かった費用(掛かる費用)
本年 9 月まで本件を実施するに掛かった費用の内訳は、労力費と参加型ワークショップに使用する資材購入費および上記の報告書とマニュアルの印刷費および製本代です。これらの費用のうち、役員会/理事会と支援委員会の労力は無償なので、実質費用は計 1 万円以下でした。もし、このような作業を外部に発注すれば(コンサルタントの雇用)、恐らく 400 万円近い報酬(200 万円/月 x 2 カ月)を支払わなければならかったと推測されます。
本件を実施することで削減することが出来た費用
(出来る費用)
本件に関わる費用の削減に関しては、下記の 2 通りが考えられます。
(a) 本件の計画策定を管理組合のみで実施したことによる費用削減
前項で述べたように、本件を外部雇用により行えば、雇用費として 400 万円近くがかかると推測されます。従い、この金額が削減されたと考えます。
(b) 本件を実施することで削減することが出来た費用もしくは出来る費用
現在、上記ビジョン 2050に基づき「管理組合の活性化」を目指し、管理組合の執行機関として役員会/理事会は肌理の細かい活動を実施しています。
明確な目標を定め、その目標を達成するための枠組みのもと、管理組合と管理会社が一体化し、マンションの運営を進めた結果、より良い生活環境になれば、居住者にとって、そして支援すべく管理会社にとって望ましいものです。言い換えれば、
これは両者にとってウィン・ウィンの関係になり、今後のマンション管理組合と管理会社のあるべき姿でもあります。
このようなメキャニズム(仕組み)で得られた成果は、現時点では残念ながら、数値化出来ません。しかしながら、視点を変えれば、現時点で数値で表すことが出来ないものの、この命題に対して納得して頂ける回答も可能です。即ち、上述のような活動を行わないことにより廃れた事象を「修復・回復するに必要な費用」から「活動に要した費用(殆ど無償ですが)」を差し引いた額が、削減することが出来たもしくは出来る費用に該当するという考えです。また、この削減することが出来たもしくは出来る費用は、管理組合にとって、さらには支援をして頂いた管理会社にとっての便益と見做すことが出来るとも言えます。
おわりに
管理組合支援委員会は、以上に述べたような管理組合の強化活動というソフト面の活動は、数値化し難い結果ですが、ハード面(施設)の適切な運営維持に必要不可欠なものと「気付き」、且つそれを実現すべく橋頭堡と認識しています。今後、ビジョン 2050で描いたシナリオをもとに、管理会社と密なる連携のもと理事会と一体になって「持続性のある快適なマンション生活の構築と資産価値の維持・向上を目指した施策の構築および実施」に向けて日々切磋琢磨し、対応していく所存です。
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